突然ですが、ガンプラを作っていてパーツがボロボロと割れてしまったことはありませんか?これはABS樹脂という素材に対し、ある作業工程を行った時に発生するトラブルです。
知ってるよ、という方。
せっかくなので、筆者がボロボロに割った無残な写真をぜひお土産に見ていってください。
なったことない方。よく知らないなぁという方。聞いたことはあるけどあまり意識してないという方。
筆者のような目に遭う前に、是非この記事を読んでいってください。
今回は、特定の条件下で破損してしまうプラスチック素材【ABS樹脂】と、それにまつわるガンプラ製作時の注意点をご紹介します。
今回もまたしても筆者丸の大失敗談ですよ!
わざと失敗してブログのネタにしようとしてない?
なお、めちゃくちゃ余談ですがある程度ガンプラを組んでいるモデラーさんには「HGズゴックの腕関節のアレ」の一言で伝わるネタです。
特定条件で割れやすいプラ素材・・・ABS樹脂
ABS樹脂とは
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂 略してABS樹脂。プラスチックの1種です。
もちろん筆者もプラスチック素材の研究者ではありません。
このフルネームを知っているからと言って特性を知り尽くしているわけではないです。
ただ、「ABS樹脂」で検索すると素材メーカー様の様々な解説記事が出ています。化学的にどういう特性があるのかは、素人でもある程度調べることができます。
しかし我々はプラモデル趣味のモデラーです。
特に当ブログは主にガンプラを取り扱っていますので、ガンプラユーザーの観点でどうなのかを知る必要があります。
ということで、ガンプラユーザーが知っておくポイントのみに絞って簡単にABS樹脂の特徴をご紹介します。
硬い!衝撃に強い!→だからガンプラの基部で使われる
ABS樹脂は製作するタイミングで「硬い」と感じることが多いです。
それもそのはずで、プラスチックとしての特徴が衝撃に強いことなのだそうです。
このため、ガンプラでは負荷がかかる関節部や胴体の腰部基軸パーツなど、根幹となる部分に使われることが多かった素材です。
徐々にガンプラからは姿を消し始めている
「多かった」と過去形なのは、徐々にガンプラの基軸パーツでABS樹脂が使われなくなってきているためです。
※代替素材であるKPSというバンダイ独自呼称の素材に置換されてきています
しかし、以下の点に鑑みて、知っておいて損はないです。
どんな風に割れるのか
こちらの写真はバンダイさんの食玩シリーズ、ガンダムアーティファクトです。
掌に乗るくらいの小ささで、小さなサイズに細密な造形と独自解釈のデザインで非常に人気があります。初めて発売された時は胸が躍りました。
なお、素材はABS樹脂です。
ABSが割れた
ABS樹脂が割れてしまった後の写真です。
数年以上前の写真なのですが、あまりに思い出深いので保存していました。
なぜこんなことになってしまったのでしょう?
どうすると割れるのか
原因は非常にシンプルで、有機溶剤(アクリルラッカー塗料やエナメル塗料が多く含んでます)を使った時に割れやすいです。
上述の素材メーカー様のページのどれにもだいたい記載がありますが、ABS樹脂は有機溶剤に弱いと明記されています。
もっとも、有機溶剤を含んだ液体がかかるといきなり破損するわけではありません。
ABS樹脂は衝撃に強いのですが、衝撃を受けても全くの無傷というわけではなく、ぱっと肉眼ではわからない程度の微細な割れ(クラック)が内部に発生しています。
クラックが起こり弱くなったところに有機溶剤がかかると、そのクラックを起点に大きな割れ=破損に繋がっていく理屈です。
見分け方
このことから、ABS樹脂を使っている素材かどうかを事前にチェックするのが最良の回避策です。
ガンプラの説明書には必ずそのランナーがどの素材か明記されていますので、それをチェックするようにしましょう。
先ほど述べたように、最近はABSを使っていないガンプラも多いですが割らぬ先の杖です!
筆者も普段ガンプラはチェックしていたのですが、ガンダムアーティファクトはすっかり抜けていました・・・外箱にちゃんと「ABS樹脂」って書いてあったのに。
舞い上がっているとつい忘れてしまいますね。
※ランナーって何?等基礎的な用語については以下の記事をご覧ください
ABS樹脂割れ対策
気にしなくていい人
ABS樹脂がどういう時割れるのかを押さえたところで、続いて対策に入っていきましょう。
まず、気にしなくてよい層は以下2つのいずれかに当たるモデラーさんたちです。
- 塗装しない派
- エナメル塗料でのスミ入れもしない
- 塗装するが、水性アクリル塗料を使っている派
ABS樹脂は、クラックしたところに有機溶剤を食らうことで崩壊します。
よって、有機溶剤を使わない無塗装派、あるいは微量である水性塗装派はあまり気にしなくてよい理屈になります。
厳密には水性アクリル塗料も有機溶剤を含んでいますので、破損の可能性は0ではないはずです。
ただ、筆者も全て水性塗料で作ることもありましたが、その際ABSを割ったことはありませんでした。含んでいる有機溶剤の量が少ない水性塗料では、そう簡単には破損に繋がる有機溶剤の量に至らないのではないかと推測しています。
実際の対策
前項で「有機溶剤に弱い」「しかし、ただ溶剤がかかっただけでは割れない」「微細なクラックがあるところに溶剤がかかると割れる」これらを紹介しました。
この条件に当てはまるのが、ABSパーツを組み立てた後です。
よって、対策はこちらです!
ABS樹脂パーツは、組み立て前に塗装しよう!!!!
これにつきます。
組み立てた際、ダボとダボ穴が合わさったタイミングでダボ側にクラックが生じます。
ダボ穴処理、特に穴側の処理も避けた方がよいです!
※ダボ穴処理に関する記事は以下です
もちろん、組み立て後にアクリルラッカー塗装すると絶対割れるわけではありません。
使う塗料の量にもよりますし、多少垂れるくらい吹いても無事なこともあります。
また、上記の他にもパーツ上にプライマーを塗るなど別対策もないわけではないです。
※また時期がきたら別記事で解説予定です
ただ、せっかく塗装までするようなお気に入りのガンプラなのであれば、安全策をとって「組立前に塗ってしまう」これで進めても損はないのではないでしょうか。
まとめ
- 組み立て前にABS樹脂があるかチェックしよう!
- ABS樹脂があったら、組み立て前に塗装しよう!
いかがだったでしょう。既知の方、同じ目に遭ったことがあるモデラーさんには懐かしさを覚えてもらえたでしょうか。
ご存じなかった方は、是非今日からガンプラの説明書をしっかりチェックする習慣を付けて楽しくガンプラ生活しましょう!