今回は丸モールド(丸い穴状のディテール)を、初心者でもきれいに作ることができる方法を解説します。以下は実際に筆者が過去作ったHGガンプラの写真です。赤い枠で囲った所が丸モールドです。
この丸モールド、ガンプラ改造の定番として人気があります。
排気穴なのか、重量を軽くするための加工なのか、ボルトが締まっている穴なのか・・・解釈は改造する人に任されていますので、自由な発想で彫っていきましょう!
ところがこの丸モールド作成は、超初心者が準備無しで初挑戦しても思ったほどきれいに彫れません。ただ穴を掘るだけなのに??
特に直径が1mmを超えてくると、境界線が甘くなりモヤっとするのです。
今回をこれを解決する優れた工具をご紹介するとともに、なぜきれいにできるのか、その原理を解説します。
丸モールド作成に使用する道具
丸モールドを美しく、境界線をきれいに出すには最適な工具があります。
- ゴッドハンド ドリルビット
- ゴッドハンド スピンブレード
以上のの2つです。
この2種類の工具を組み合わせて使用することで、誰でも手軽に&きれいに丸モールドを彫ることができます!不器用モデラー筆者丸は、この2つの道具で実際にきれいに彫れるようになりました。
まずはこれらの工具を解説し、続いて実際の作業風景をご紹介します。
ゴッドハンド ドリルビットの解説
ドリルビットは何が優れているのか?
ゴッドハンドドリルビットは、その名の通り穴を掘るプラモデル用のドリルです。
ドリルなんて、別になんだっていいや・・・・そう思っていた頃が、俺にもありました。
刃牙かよ
しかし、ドリルビットはプラモデル改造に完全特化したドリルです。
実際に購入してみると、その辺で適当に揃えたドリルとは訳が違いました。
筆者は結局、全ドリルをドリルビットに揃え直してしまいました。
【ゴッドハンド ドリルビットのここがすごい!】
・軸径が全て統一
・プラモデル向きの精度
・手で彫りやすい微妙な先端の丸さ
・0.1mm単位のラインナップ
以下で説明します
軸径が全て統一
個人的に一番感動したのはこれです。
軸径とは、ピンバイス(持ち手)に差し込む工具側の太さです。
ピンバイスを扱う際、最も煩わしいのはピンバイス側のチャックと呼ばれる先端工具の抑えパーツを交換することです。
一般的なドリルは細ければ細いほど軸径が小さく、ピンバイスの中のチャックも都度交換する必要があり、モデラーの間ではよくある厄介例として語り継がれてきました。
しかし、ゴッドハンドドリルビットは細いドリルから太いドリルまで軸径が共通しており、ピンバイスの中のチャックまで全交換する必要がありません。これはかなり画期的なことでした。
ピンバイスにまつわるお話はピンバイスの記事でも触れているので、是非お読みください。
プラモデル向きの精度
プラモデル向きではない、一般工具のドリルは基本的に大味です。(穴が開けば用が足りる)
しかし、0.1mm差を気にするプラモデルユーザーには穴を開けるとき周囲を荒らすようなドリルは好まれません。
ドリルビットはきれいに切削してくれるため、人間の目では真円と判断されるような精度で穴が掘れます。
手で彫りやすい微妙な先端の丸さ
他のドリルと比べると、先端が丸くなっています。
一見すると穴を開ける用途のドリルに不向きな特徴に思えるのですが、実際に使ってみるとこの丸さのおかげでプラスチックの上を滑りません。
よくドリルで穴を開けようとして滑ってしまってプラスチックを傷つける失敗をしていたのですが、ドリルビットに変えてからそのミスが減りました。
0.1mm単位のラインナップ
これも魅力です。
改造用のパーツによっては1.6mmだったり1.8mmだったり、直径の長さを0.1mm単位で変えたい時があります。
この微妙なワガママに完全対応。
基本となるBセットは0.5mm単位で1mm~3mmまで揃っているのですが、加えて1.1mmだったり0.6mmなどのドリルビットも購入可能になっています。
モデラーの痒い所に手が届くラインナップです。
筆者は結局0.5mmから3mmまで、0.1mm刻みで全部揃えてしまいました・・・・
が、そこでもう一つ驚きが。
例えば1.7mmが入っているCセットからは、基本Bセットにある「2.0mm」「2.5mm」はダブらないよう除外してくれているのです。
こんな細かいところもうれしいポイントです。
こんなにすごいドリルビットの欠点は?
他のドリルに比べるとお高いです。
そんなにすごいならこれ一つで十分なのでは?
残念ながら、ドリルビットはあくまでも円をきれいに掘るための道具です。
丸モールドはきれいに円状に穴を開けるだけでは不足で、あたかも円柱がそこに入るような形状で彫られている必要があります。
そこをカバーするのが次の工具、スピンブレードです。
綺麗な丸モールド作成に必須 スピンブレードの解説
続く工具は同じくゴッドハンドのスピンブレードです。
これも良い命名ですが、スピン=回転 ブレード=刃
回転させて使う薄刃の彫刻刀です。
ドリルで開けた穴に対してスピンブレードを差し込み、回転させることで「穴」を「丸モールド」にチェンジすることができる工具なのです。
スピンモールドはドリルビットと同じく、以下の長所を受け継ぎます。
・軸径が全て統一
・0.1mm単位のラインナップ
薄刃彫刻刀としてのスピンブレード
スピンブレードは回転させず、普通の彫刻刀として使うこともできます。
彫刻刀としての特徴は薄刃であること。これを利用して、丸モールドだけでなく四角形のマイナスモールドを彫ることもできます。
マイナスモールドは丸モールドより一段階ステップアップしたテクニックが必要で、超初心者には難易度が高めの作業です。
しかし、スピンブレードを使うと他の方法で彫るより難易度を下げることができます。詳しい彫り方は別記事で解説していますので、ご興味のある方はぜひこちらもご覧ください。
スピンブレードで美しい丸モールドが彫れる原理
スピンブレードの仕組みは画像の通りです。
ドリルだけでは、左図のようにどうしても形状の問題で隅が甘くなります。
これが、ただ穴を掘っただけではきれいに見えない要因です。
スピンブレードは薄刃の平たい彫刻刀です。
先端は90度の直角になっており、かつ非常に鋭利です。
この先端部をドリルで開けた穴に差し込み回転させると、右図赤丸部分が削れます。
これによって穴がきれいな円柱状になるという仕組みです。
先ほど解説した通り、丸モールドは底が丸くてはダメなのです。
それではいかにも「プラモデルに穴を開けました」という工作になってしまいます。
プラモデルの真骨頂は、あたかも実在しているように見えること。
この底面の丸みという微差があると、おもちゃ感が出てしまう訳です。
実際にやってみましょう
写真左がドリルで穴だけをあけた状態です。
右がスピンブレードで彫り直した状態。くっきりとしていて、違いが出ているのではないでしょうか。
作業ポイントはただ1つ、ドリルビット→スピンブレード これだけ!
写真がスピンブレードを回転させているところです。
鉄則は「ドリルビットで穴を開ける」「その後スピンブレードで彫り直す」
この順番を守るだけです。
この順番さえ守れば、きれいに丸モールドを作ることが可能です!
オフレコですが・・・・
筆者はスピンブレードを買いたての頃使い方が分かっておらず、ドリルを使わず直接スピンブレードを回してミスりまくってました!!!
説明書はちゃんと読みましょうという大事な教訓です。
一度丸モールドを作ってしまえば、後はそのままシンプルなモールドとするのもよし、写真のように一手間加えて中に丸パーツを差し込んでボルト風にするのもかっこいいですね。
きれいな丸モールドを作って、お気に入りのガンプラをよりかっこよくしてみてください!
また、丸モールドとスジ彫りを合わせたデザインを彫る方法も別記事で解説しています。
こちらの記事では、丸モールドを更に面取りすることでもっと立体的にするやり方も解説しています。この記事でやってみたいなと思われた方はぜひ合わせてご覧ください。