なぜ爆発的にヒットしたのか?その秘密は汎用性にあり!マジ・スクの使い方徹底解説
本日のテーマは2024年にモデラー達の間を席巻したアルゴファイル マジ・スク(マジスク)のレビューと使い方解説です。
【2025年追記】使用から半年以上経ちましたので、「その後」についても触れます。

興味はあるんだけど、どう使うのかよくわからないな
ってのが第一印象だったんだよね
すごい売れたのかな?

筆者は、使う前はニッチで人を選ぶタイプの工具だと感じていました。
性能は尖りまくっていてユニーク&高性能。
実際使ってみると汎用的で利用場面が多かったです。
ヒットしたのも納得。
当記事ではマジスクの使い方解説とレビューを行います。
後半ではまだ買えないモデラーさん向けに、代用品もご提案します。
マジ・スクとは何?
マルチジルコニアスクレーパー 略してマジ・スク(マジスク)。中点あり「マジ・スク」が正式な通称だそうです。アルゴファイル製。



端的に表現すると【ジルコニアセラミック】製の【キサゲ】です。
ジルコニアセラミックとは?
人口歯などにも使われる超硬質の素材。
錆びない、摩耗しにくい等のメリットがあり、実はプラスチック加工との相性が抜群に良い。
その代わりジルコニアセラミック自体の成型には技術が必要とされる。
キサゲとは?
金属加工で用いられていた工具で、プラモ用工具にも流れてきた。
切断するのではなく、削ぎ取る目的で使われる。このため切れ味ではなく頑強さが重視される。
ジルコニア製の工具も、金属製のキサゲも過去既に存在していました。
例えばジルコニア製のナイフ型工具なら、同じアルゴファイルからマイクロフィニッシュ。
金属のキサゲなら童友社きさげカッター。ミネシマさんも作ってますね。
マジ・スクはこの2つの要素を組み合わせたのがユニークなポイントと言えます。
開発者はプロモデラー、原型師の伊藤霊一さんです。
マジ・スクは何に使えるの?
すさまじいのはその削り性能
圧倒的なのは硬質な極厚刃を利用した削り。
おまけに切断するタイプの刃ではないため、指が軽く触れるくらいでは怪我もしません。
「触れるくらいでは怪我しません」は事実ですが、勢いよく刃先が指に向くと怪我します。
切れにくい、怪我しにくいのであって「切れない」「怪我しない」ではないので気を付けて!
画像は実際にプラ板を削っている時のやり方を撮影したものです。



切断タイプではない、キサゲとしてはかなりの切削力があります。

切断工具じゃないくせに、気持ちいいレベルでガンガン削っていきますよ!
バリ取りが超得意
この削り性能をフルに活かせるのがプラモデルのバリ取り(ゲート処理)でしょう。




ゲート処理とは、ランナーに接続されたパーツをきれいにする処理の方法。
プラモデルを組み立てる上で最初に学ぶテクニックです。
ニッパーで二度切りした後、残ったゲートを削ぎ落すのにマジ・スクは大活躍します。
ただしこの時の注意点。バリ取りに良いのですが、バリが大きすぎるときちんと取れません。
これは、ナイフと違って切断性能自体は低いためです。
ニッパーでしっかりバリを小さくしておいてからバリ取りしましょう。

敢えて意地悪言うけど、デザインナイフでよくない?

もちろん良い。
ただ、マジ・スクを使うメリットは「切れ味がない=指を切りづらい」という点です。
慣れない人がデザインナイフでゲート処理するよりはるかに安全だよ。
危険性が低いうえに、切断工具ではないのでナイフと違ってえぐりすぎるリスクがほぼありません。
また、この後マジ・スクを使いこなせるようになると
「削り作業は全部マジ・スクでいいや」と作業工程が変化していき、
気づくと持ち替えが面倒になって
「いかにマジ・スクで作業するか」に考えが切り替わっていきます。

何それちょっとおもしろいやん

マジ・スクって不思議な工具で、汎用性が異様に高いから「なるべくこれ一本でできないか?」を楽しむ感覚がじわっと出てきます
勿論実際はちゃんと持ち替えた方がいいですよ!
合わせ目消しの接着剤もガンガン削る
合わせ目を消すために接着剤で盛り上がった部分も、いきなりヤスリがけするよりもマジ・スクで削ってからヤスった方が時短です。



この辺りは「プラモデルにおけるカンナがけ」と考え方は全く同じです。
基本的にはマジ・スクはカンナがけツールだと念頭に置くとよいのではないでしょうか。
プラモデルにおけるカンナがけは、ヤスリがけと並行してやり方を覚えておくと非常に便利になるテクニックです。
詳細は以下をご覧ください。
その他「プラを削りたい」場面では全方位に対応可能
これ以外にも、プラを削りたい場面は多々出てきます。
例えばスジ彫りのキワを削って、面取りする仕上げの場面。
エッジ出しする際も、ヤスリの代わりにマジ・スクでごっそり削ってしまう手段もあります。
画像はZガンダムのシールド。エッジがバッキバキに出せているのが分かります。

【2025年追記】
半年間ほぼ毎日のように使いましたが、常時手元に置いておく工具になりました。
基本的には、表面処理作業に関してはほぼどこかに出番があります。
体感的には、6~7割くらいの表面処理工程はマジ・スク一本で対応可能です。

何それすごい

切削能力が高いのに深い傷をつけづらく、耐摩耗性が高いので性能が全く変わらない・・・というメリットがつよつよです。
使うまでピンときませんでしたが、「(表面処理なら)なんにでもマジ・スク」というスタンスで使ってみるとほんとになんにでも使えることがわかってきます。
似た工具はあるのに、マジ・スクは何がいいの?
剛性MAX!雑に使える
マジ・スクはジルコニアセラミックという硬質な素材を活かし、非常に剛性が高いです。
硬い上に1.5mmと厚いので、ちょっとした引っ掛かりも難なく削っていきます。


また刃と持ち手(軸)が一体型である点も有利に働きます。
刃交換ができないデメリットもありますが、デザインナイフペン軸などに差して使うタイプと比べ持ち手と刃の一体性が高いメリットが出ます。
持ち手から刃の先まで、一切のブレなく使用できるわけです。
この剛性のおかげで、削った際の表面もきれいですし(剛性が低いとビビリが生まれ、削り面が荒れます)、雑に粗く使えるメリットも生まれます。
繊細な工具も美しくていいのですが破損のリスクがありますし、手軽に雑に使えるってのはかなりのメリットなのです。
また、刃先の形状が純粋片刃ではなく、先端がごくわずかに両刃になっているのもポイントが高いです。
マニアックな使い方ですが、スジ彫りに対して寝かせて使用すると同時に2面を面取りできます。
切れ味の調整が絶妙
刃の形状が非常に独特なのは先ほど述べた通り。
これは(少なくとも筆者は)他プラモ用工具で見たことがありません。

この独特な形状とジルコニアセラミックの硬質性が相まって、絶妙な切れ味加減を表現しています。
滑ってもそう簡単に指が切れるほどでもない、しかし他キサゲ工具よりも切断性が高い・・・というさじ加減です。
そして、ジルコニアセラミックの特長として摩耗がほぼありません。
【2025年追記】
使用を開始して半年以上、どんなプラモを作る時にも使い続けていますが全く摩耗は感じません。
これから1年、2年と使っていくと思いますが、他ジルコニアセラミックの工具から推察するに一生レベルで使える可能性があります。
そもそもがジルコニアセラミック自体、加工が難しいレベルの硬質さなので、柔らかいプラスチック(PS)程度ではそうそう摩耗しないのだろうと思われます。
マジ・スクとその他工具のポジションマップ比較

マジ・スクと他のキサゲ等カンナがけツールを比較した際の、それぞれのポジションです。
※筆者独自観点
マジ・スクは確かに優れた工具なのですが、「あらゆる工具の中でNo1だ」というわけではありません。
これはマジ・スクに限らず工具には得手不得手があり、守備範囲が変わるからです。
これを見ていただくとわかる通り他ツールに比べ中道的で、イコールカバー領域が広い点がこのマジ・スクのメリットになっています。
ポイントは先ほども挙げた通り切れ味の調整です。
剛性が高く、削り性能が高すぎるとプラに傷をつけやすくなり、操作が難しくなります。
マジ・スクは対プラを考えた時に絶妙に表面が荒れづらい程度の切れ味と剛性に調整されており、これが汎用性の高さに繋がります。
マジ・スクの苦手なこと
とはいえマジ・スクも、どんな場面でも考えずに使えるわけではありません。
苦手なことがあります。
曲面への対応は苦手
これは直刃という性質上やむを得ないものです。
直刃は長い直線がある分、注意して扱わないと曲面部を平面に削ってしまうリスクがあります。


以前も、初心者は曲げ刃のデザインナイフをおすすめする記事を書いたことがあります。
現状、曲げ刃タイプのマジ・スクがない以上は「注意して曲面を削る」以外にありません。

アルゴファイルさん!
曲げ刃マジ・スク、お待ちしてます!
その他のデメリット
まず、軸との一体型なので仮に別の刃先が将来出たとしても交換はできません。
交換型工具に比べると、軸のお代と場所はデメリットになります。
もちろんこれも、一体型であるために剛性が高いメリットの裏返しです。
また、細かい部分ですが刃保護のキャップがありません。
切断工具ではないので危険度は低いですが、気持ち的にキャップは欲しかった人も多いのではないでしょうか。
→と、当初記載していましたが、2025年ユーザーの声に応え公式のキャップが販売開始!
アルゴファイルのコーポレートカラーであるブルーにロゴがあしらわれた保護キャップで、かなりカッコいいです。
こういったスピード感もアルゴファイルさんの魅力ですね。


なお筆者は引き出しのペントレイに裸で放り込んでます
マジ・スクについては別記事「2024年ベストガンプラ工具」の項でも触れましたので、よろしければそちらもご覧ください。
でもマジ・スク手に入らないよ・・・・・代用品は?
ここまでマジ・スクの良さを紹介してきましたが、冒頭でもご説明した通り大ヒットしたがゆえに記事公開直後の2024年11月時点ではなかなか手に入りませんでした。
主要モールは正規価格をはるかに超える金額になっているため、リンクは一時落としておきます。
※追記・・・毎月生産されているおかげで、価格暴騰も落ち着き入手性があがってきたためリンクを復活させます
毎月のように増産されており、また簡単に破損しないことから買い替え需要もあまりなさそうです。
このため、筆者個人としてはいずれこの品薄状態も収まるものと予想しています。
→【2025年追記】増産体制も確立されたことでかなり手に入りやすくなりました。
ぼちぼち代用品を探す必要もなくなってきたかもしれませんが、せっかくなので公開当時の記事も以下、残しておきます。
上述のポジションマップの通り、完全に同一性能に該当するモノは見当たりませんが、類似する使い方の工具は選択肢があります。
筆者も使っている物から、似た使い方ができるものをご紹介します。
童友社 キサゲカッター

先ほどご紹介した、金属製のキサゲです。
剛性はマジ・スク以上。その分厚い金属で、ガンガン削っていきます。
しかし刃はないため、切断は一切しません。
金属ということもありちょっとミスると傷が大きくなってしまう点はマジ・スクよりピーキーです。


ヘミアイピーディ ぷら用カンナ

カンナがけツールとして素晴らしく、おすすめの工具です。
筆者も長いことお世話になっています。
一見すると切断工具に見えますが、刃部分は鈍らせてあり指を怪我するリスクは非常に低いです。
特に平刀形状の方は形状のおかげでパーツとの平行を保ちやすく、便利です。


直刀形状の方はマジ・スクと利用場面が競合しますので、筆者は利用頻度がかなり減ってきました。
ガイアノーツ マイクロセラブレード
先ほど紹介したアルゴファイル「マイクロフィニッシュ」と恐らく同一品ではないかと思われます。
剛性が非常に弱く、削り性能も低いです。切断もしません。
しかしそのやわらかさ(しなり)のおかげでプラに傷をつけづらいというユニークな性能を持っています。
おまけに、刃が直刃と曲げ刃の両端を持っていて利用場面によってチェンジできます。



マジ・スクの代用か?というと少し守備範囲が異なる(削りが少なく、傷つけづらい)ので厳密に代用足りえませんが、揃えておいて損はありません。
まとめ
なお、最後になりますがマジ・スクの正規価格は2025年時点で税込み2,970円です。
メーカーのアルゴファイルさん自身が不正転売撲滅のためにかなり真剣に活動されています。
我々モデラーも正規ルートで正規価格で購入するよう意識したいところです。