エナメルの性質を逆利用して楽にパーツ切断
今日の話題はプラモ/ガンプラ用の塗料として有名な3つのうちの1つ、エナメル塗料です。
エナメル塗料の特徴
ガンプラで使われるエナメル塗料と言えば、タミヤエナメルが著名です。
スケールモデラーならハンブロール等の海外製を愛用されている方もいるでしょう。
エナメル塗料はガンプラ用塗料としては、部分塗装によく使われます。
また、スミ入れの際にも使われています。
勿論、メインの塗料としても使えます。
しかし、何故多くの先人たちはエナメル塗料を部分塗装やスミ入れに使う事が多いのでしょう?
それはエナメル塗料の特徴に理由があります。
メリット
エナメル塗料を使う大きなメリットは上記の通りです。どちらも、非常に大きなメリットです。
デメリット
伸びがいいというのは、裏を返すと乾燥が遅いという事でもあります。
また、プラスチックを浸食して割ってしまう大きなデメリットを持っています。
このプラを割ってしまうのが本日の本題です。また後程触れていきます!
エナメル塗料はどうやって塗るの?
筆者の周囲では、エナメルは筆で運用している人が多いようです。
また、エナメル塗料に限りませんが、塗る際は塗料に対して専用の溶剤を混ぜ、薄めて塗ります。
子供のころ水彩絵の具を水で薄めて塗っていたと思いますが、あれと同じです。
例えば、タミヤエナメル塗料であればタミヤエナメル溶剤で薄めます。
他塗料の溶剤や水で薄めてはいけません!
エナメル塗料の特徴を総合すると・・・?
メリットを生かしてスミ入れ塗料としてよく使われる
伸びが良いことと、他塗料を溶かしづらいことは、スミ入れに使う塗料に向きます。
スミ入れは表面張力を利用して一気に溝を塗るので、伸びが良い塗料が最適です。
また、エナメル塗料は他塗料を溶かしづらいので塗装済みパーツの上からスミ入れができます。
このことから、エナメル塗料であるタミヤスミ入れ塗料が多くのモデラーに支持を受けています。
タミヤスミ入れ塗料は、タミヤエナメルをあらかじめ薄めて、かつ蓋部分に筆を付けてスミ入れしやすくした製品です。
スミ入れについて詳しくは以下の記事をご覧ください。
デメリットを受けて、あまり主塗料に使われない
一方、プラスチックを割ること、硬化した後の塗膜が強くないことは主塗料として使うには大きなデメリットです。
このことから、多くの先人モデラー達はあまりエナメル塗料をメインの塗料に採用していません。
特に、「プラスチックを割る」これは気になるデメリットです。
どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。
エナメル塗料はプラスチックを浸食する
以前、ガンプラでまれに使われる「ABS樹脂」というプラスチックにラッカー塗料を塗ると、一定条件で割れる話題を挙げたことがあります。
この時の条件とは【パーツ同士をはめること】でした。
おさらい!
- ABS樹脂パーツをはめることで、表面上見えない微細な割れ(クラック)が発生する
- そこにアクリルラッカー溶剤が接触すると、パーツがはっきり割れる
エナメル塗料・・・正確にはエナメル溶剤がこれと同じ状態を発生させます。
エナメル溶剤は炭化水素系なので、これがプラスチック(スチロール樹脂)の結合を解いてしまうのです。
このことから、エナメル塗料を使う際はある程度考慮しないとガンプラのパーツを割ってしまう事故につながります。
タミヤスミ入れ塗料はまさにエナメル塗料なので、何も対策せずにスミ入れしてしまうと割れる可能性をはらんでいます。
では、この事故はどう防げばよいか?これが次項のテーマです。
エナメル塗料によるパーツ割れを防ぐ方法
防ぐ方法は意外とシンプルです。
他塗料でパーツを塗り、覆ってしまうこと
エナメル塗料の特徴に「他塗料を溶かしづらい」がありました。
この性質があるため、パーツとエナメル塗料の間に一層他の塗料を挟めば割れるデメリットはほぼ無視できることになります。
このため、全塗装派にはそれほどエナメル塗料によるパーツ割れは警戒されていません。
ただし、大量のエナメル塗料を一気に一か所に集中させるとさすがに割れますのでご注意を!
しかし、素組派の人はあらかじめこのことを知っておかないとちょっと危ないです。
ということで、塗装をしない素組派の人は以下でエナメル塗料によるガンプラ割れを防止しましょう。
素組派の人はどうしたらいいの?
組み立て前に塗ってしまえば、微細なクラックは発生していないのでそう簡単に割れません。
また、スミ入れが目的なのであればそもそもエナメル塗料を使わないのも選択肢です。
ガンダムマーカーならエナメル溶剤不使用なので、全く気にせずスミ入れできますよ!
このブログでもよく、「塗装しないならガンダムマーカースミ入れがいい」って話が出るのはこういうことだったのね~
筆者も塗装しない時はガンダムマーカースミ入れペンにお世話になってました!
割らないし保管しやすいからとてもおすすめです。
ただし!ガンダムマーカーも「他塗料を溶かす」というエナメル塗料と真逆の性質を持っています。
ガンダムマーカーのスミ入れはあくまで素組派の人への推奨品ですのでご注意を!
エナメル塗料による割れを改造に利用しよう!
さて、ここまではエナメル塗料/溶剤でガンプラが割れてしまうデメリットを扱ってきました。
しかし、この割れる点は、わかったうえで意図的に利用すれば非常に有効な改造手段になります!
それが、エナメルクラックを利用したパーツの切断です。
パーツの切断、どうやる?
過去このブログでも改造時のパーツの切断を扱ったことがあります。
例えばグフやザクのヘルメットを一度切断し、角度を変えることで悪顔にする改造などです。
また、後ハメ時の加工でもパーツの切断が有効です。
パーツの切断時、プラスチック用ノコ(エッチングソー)を使う人が多いでしょう。
筆者も状況によってプラノコと超音波カッターを使い分けながら作業することが多いです。
しかし、エッチングソーは刃がまっすぐなので、直線は得意ですが曲線を切るのが苦手です。
この時有効なのが、エナメル溶剤による切断です。
曲線に沿ってパーツを切断!エナメル溶剤を利用した方法
必要なものは以下です。
- スジボリ用タガネ
- エナメル溶剤
- スミ入れ用に使える細い筆
それぞれ、例として実際の商品例を挙げます。
スジボリ用タガネ
エナメル塗料でパーツを割る際、切れ目を入れるのに使います。
筆者はファンテック社スジ彫りカーバイトを愛用しています。
スジ彫りカーバイトについては専用の解説記事を用意しました。
エナメル溶剤
先ほど挙げた通り、エナメル塗料用の溶剤を使います。
記事の作業実例ではガイアカラーのエナメル溶剤を使用しました。
スミ入れに対応した細い筆
基本的に細い筆なら使えますが、筆者はずっとスミ入れ専用のゴッドハンドスミ入れ筆を愛用しています。
スミ入れ筆はスミ入れに特化して開発された筆で、溶剤を多く含ませられること、毛先が細くピンポイントで溝に差し込めるのが特長です。
実際の作業
では、早速作業していきましょう。
最後に割る際は、切れ目に沿ってえいっと折るように割りとってください。柔らかくなっているので、手でむしり取るように割れます。
まとめ
本日はエナメル塗料のメリットとデメリットをしっかり学びました。
特にエナメル溶剤を使ったパーツ切断は、曲線パーツの分割に非常に有効です。改造時、ぜひ試してみてください!